十二天とは上下、日月、四方(東西南北)、四維(四方の中間)を守る守護天。 この十二天の近くに 谷崎潤一郎 が居を定めたことがある。 小田原から引き移つて来た私の家族が、最初に住んだ家は本牧の海岸にあつて、他の家よりも一層海につき出てゐる 木造の二階だての西洋館だった。東向きのベランダの直ぐ下には、コンクリートの崖の裾まで青い波が寄せてゐて、 港へ出入りする大小の船はいつも眼の前を過つて行つた。 本牧の私の家は造りは西洋館だつたが、臺所だの湯殿だの便所だのの都合が日本風に出来てゐたし、 畳の座敷も一と間あつて、純洋風とは云へなかつたので、だんだん洋風生活の便利を感じ出した私たちは、 折があつたら山手の居留地へ移りたいと思つて居た。 (本牧の住居のこと) より |